基本はどんな物事でも大切ですし、もちろん武道でも例外ではありません。

基本稽古には、表面的な動きではなく、体の本質的な動きを変える効果があります。さらに進めば、心・意識の次元まで変えてしまいます。

例えば、こちらの生徒さんは寝技でのパウンド・鉄槌をしていますが、はじめは腕力で「殴って」いました。

しかし、実は腕力はさほどいりません。脱力し、腕の重さを利用して「落とす」ほうが、はるかに威力が出ます。

そこで、空手の基本稽古にもある、手刀の稽古をしてもらいました。手刀は腕力ではなく、腕の重さを真っ直ぐ相手に落とす技です。腕の重さを利用して叩くのに、手刀は持ってこいの稽古というわけです。

結果、小一時間ほどで見違えるほどの威力になりました。

すごい人ほど基本を大切にする

はじめは腕力に頼って手刀・鉄槌をしていた生徒さんが、昔ながらの基本をきちんと行うだけでどんどん変化していくのを見て、やっぱり昔の教えって凄いなとあらためて感動しました。

教える側の僕ですが、稽古をする人の変化を目の当たりにする度に、空手の基本の凄さを何度も思い知ります。昔の人は本当に偉大。武道は人類の叡智だなと感動しますし、この道に出逢えた事に感謝の想いでいっぱいになりますね。

基本稽古のように、実戦とは違う構えだけれど、体を大きく使うことに意味があることは、あのイチロー選手も大切だと語っています。

「打ちやすい球を全力で、なるべく遠くへ打ち返すトレーニングを僕は必ずやっている」

「確かに試合という実践形式ではこのままのフォームでは使えないけれど、練習の段階で大きく体を使ってフルスイングで打ち返すことが大事」

「そういう練習をしていないと、自分の中に感覚が定着しない」

本当に同感です。ボクシングやキックボクシングのように、ファイティングスタイルからの練習もよいのですが、体が持つ性能をフルに発揮したいなら、昔ながらの基本稽古を通して体の使い方を覚えることが大切です。

園芸に例えると、花をきれいに手入れするよりも土壌を豊かにする試みですね。そうすれば、放っておいても立派な花が咲くでしょうから。

投稿者プロフィール

岡本
岡本マーシャルアーツアカデミー代表・空手クラス担当
東京の大手フルコンタクト空手の道場で長年修行。
空手修行の一環としてボクシングやキックボクシングも学び、プロライセンス取得・試合も経験。
道場での指導の傍ら、ボクシングトレーナー、フィジカルトレーナーとしても活動しています。
最新記事一覧
スポンサーリンク