当道場は「30歳以上の挑戦」というちょっと風変わりというよりも、世間一般から見れば、ちょっと頭がおかしい様な、武道や格闘技を好む世代を完全に外した、まるでマーケティングを無視した様な、非常におかしな方針を立てている道場なのですが、こんな一風変わった道場に入られる方々がどんな事を感じ、考えて入会されているのか、そんなことについて書いてみたいと思います。

 

新しく入会された方には、稽古終了後などのリラックスされた状態の時に、いつも空手を始めた、あるいは再挑戦された動機を聞いています。

こういった心のヒダに触れる様な質問には、入会の手続きの際に聞いても、皆さん深く離される事ってほとんどないんですよね。大体、その時は当り障りのない内容をお話になります。

健康のため、とか運動不足解消とか、せいぜい「どうせするならスポーツクラブとかで走ったり筋トレしたりするだけよりも何かの技術を身に付けたいと思いました」とかいった程度ですね。

入会してしばらくして、道場の雰囲気にも少し慣れた頃、稽古をして心と体を動かし、血流が良くなり、脳内ホルモンの状態が良くなった時、つまり心と体が解放された状態になった時に、ポロっと口に出される様になります。

 

十代とか二十代前半の若い世代と違い、仕事も忙しく、責任もある立場になり、後進の育成も任される状況になっているのに、わざわざ仕事終了後に肉体的に追い込む様な事をしようと思われる方には、皆さんそれぞれにそれなりの想いがあるものなんですよね。

この部分を知っておく事は、その方への指導の方向を決めていく上でも、また日々のコミュニケーションを取っていく上でも非常に大事な所なので、機会を見つけて必ず聞く様にしています。他の人が居ると、口に出さない方もおられるので、そういった人には一対一の状況の時に、指導者である僕自身が空手を始めた動機や続ける過程で何度も何度も挫折した話などをして、信頼関係を作っていきながら少しずつ聞いていきます。

 

空手に限りませんが武道や格闘技は、キャンプをするとか、釣りをする、といったものに比べて、レジャー的要素がかなり欠けたジャンルですし、エネルギーの有り余っている若者ですら、「しんどい・辛い」と感じるハードルの高いもの。それをなぜ三十代以降になって始めようと思うのか?

今のところ、会員さんは四十代後半の方まで、おられますが、体験では六十代の方が来られた事もあるんですよね。

 

その動機には、その人の人生において、「譲れない大切な何か」があるからなんですよね。自分の人生に真剣に向き合おうとすると、人は「今までの自分の人生には欠けているピース」に目を向けざるを得なくなるし、残された今後の人生の充実を考えると、何とかそれを埋めるために動き出そうと決意するものなのだと思います。

色々とお話を聞いていると、やはり、「昔、諦めてしまった自分が許せないんですよね」とか、「自分の中に本当の意味での自信が欲しい」、「自分の中に欠けている部分を自覚していて、それをちゃんと埋めたいんです」といったお話をよく聞きます。

 

「ウチの道場のHPを見ていて、特に引っ掛かった部分はありますか?」と聞くと、「やり残した何か」といった部分が響いたという様な事をおっしゃいます。

そういった、その人が心の底から願っているものを知る事は、僕が指導をしていく上で、非常に大切にしている部分です。

 

三十歳を過ぎて、若者が求める様な強さ、「他者と比べた肉立的な強さ」のみを求めている様な人は来ないんですよね。皆さん、もっと人間的なもの、内面的な強さ、形而上学なものというか、哲学的なものを求めて来られている。自分の一生を支えてくれるバックボーンの様なものを魂が求めているんだと思います。

そういったそれぞれの方々想いを聴く度に、本当に心の底まで響いてきますし、感動させられます。「琴線に触れる」という素晴らしい言葉がありますが、本当にそんな感じです。

大げさでなく、心が震える様な感動を与えられるんですよね。そういった皆さんの想いに応えたいと、心の底から思わされます。この感動が、僕が指導していく上での原動力になっていますね。

 

そして同時に、こういった熱い想いに応えられる人間である様に、自分自身の人間性を磨いていかねば、と気が引き締まります。皆さんの心の中の想いを目に見える形にして、現実世界に引き出してあげられる事、それが僕の指導者としての仕事、役割なのだと思っています。

 

もし、この文章を読んで、「自分もその一人だ!」と思った方は、ぜひ道場の扉を開けて欲しいと思います。ここには、あなたが求めている人生の真実、そしてそれを共に研鑽し、追及していける本当の仲間がいるはずです。

 

投稿者プロフィール

岡本
岡本マーシャルアーツアカデミー代表・空手クラス担当
東京の大手フルコンタクト空手の道場で長年修行。
空手修行の一環としてボクシングやキックボクシングも学び、プロライセンス取得・試合も経験。
道場での指導の傍ら、ボクシングトレーナー、フィジカルトレーナーとしても活動しています。
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