【「教える」って「きちんと伝える」こと】
 
指導者の人って、全くの初心者を教えるのを嫌う人が割と多い様に感じるんですよね。僕が習ってる頃はそういう事が多かったんですよね、覚えが悪いと先生が不機嫌になったり、怒り出したり・・・。初心者や不器用な者に教えるのを非常に邪魔くさがる先制や先輩方が結構いました。
 
でも僕は自分が魚籠用で困ったからという部分も大きいと思うんですが、なかなか上達出来ない様な不器用な人を教えるのが好きなんですよね。真っ白の状態って教えやすいしと思うんですよ。確かに不器用だったり、その人ならではのクセがある事もあるんですけど。
 
天才的な人なんて、極端に言えば、どこ行ったって、誰に習ったて、上手くなるんですよ。サッカーでも野球でもボクシングでも、何でも上達するんです、そういう人って。
 
順番、手順というものをきちんと押さえていけば、人ってちゃんと伸びていく。
手順を間違えたり、その人の必要な部分を抜かしてしまうと、上達しない。
 
「教えた気になってる」んじゃダメで、ちゃんと中身が伝わっているか」が大事なんですよね。
 
 
 
【「荷物を運ぶ」のが技の目的】
 
「技とは荷物を運ぶこと」、こんな表現で僕は伝えたりするのですが、技や動きを作る時に大事なのが体を動かす手順や動かす部分への意識。
どうやって荷物を運ぶのか?を体の各部に伝えてあげること。
エネルギーの伝達の方法ですよね。
 
特にインナーマッスルは体の深部で意識がいきにくい部分なので、凡人には扱いが難しい。だから、そこを意識させてあげる事が重要になりますね。
 
昨日は初めてまだ間もない方への指導をしましたが、下突き(ボクシングでいうアッパーですね)における身体内部の操作やそこにアウターマッスルの動きをどう合わせていくか?を行いました。
 
15分後くらいには、サンドバッグを打つ音が一変しました。
人ってちゃんと分かる様に教えてあげれば、ほんの短時間でも本当に変わるんですよね。
 
この時は、宅急便に例えて、最初は配送ルートを教えて脳と使う神経に回路を作r説明をして、ルートが出来た後に、「荷物」を忘れず運ぶ様に指導しました。
 
荷物は空手の場合、威力(エネルギー、違う言い方をするなら「氣」ですね)です。
威力は目には見えませんが、感じる事が出来ます。組手をしていれば、相手の技に威力があるかどうかは初心者でなければ、貰う前に分かりますね。体がきちんと恐怖を感じてくれるから。
 
スポーツや格闘技の世界では、この肝心な「荷物を運ぶ」という事を忘れている人がわりと多いと思います。スポーツ界の「フォーム重視の弊害」なんですよね、これ。
 
それには理由があって、スポーツや格闘技は「実際に使うフォーム=完成形」を初めから教えるから。いきなり完成形を教えられて、「その中身=威力やスピード」まで身に付けられる人ってほとんど居ない。それが出来るのは、一部の天才だけだと思います。
 
僕はボクシングのトレーナーもしていますが、ボクシングなら、例えば右ストレートなら「顎やこめかみをカバーしたか前から、相手の顎を打ち抜き、そのまま元の軌道を通って自分の最初の構えの位置まで一瞬で戻す」ように教えるわけです。放り出したり、打ちっぱなしはダメで、必ずガードから打ってガードに戻る所までで右ストレートです。
そして「力むな」「ガードを下げるな」「スピードで打て」「キレを出せ」と教わります。勿論、相手が不器用だなと思ったら、「最初はゆっくりでいい」位は言うのですが、それでも空手の様に「拳を脇の下にある位置から突く」わけじゃないから、どうしてもガードのために上げている肩=三角筋や僧帽筋が緊張してスピードが出ない上にパンチに力みが出てしまう。
 
そうすると、「中身=荷物である威力やスピード」が疎かになりがちなんですね。
 
だから、初心者には中身を運ぶ事のみを意識させてあげるといい。するとガードのために使っている筋肉の緊張が取れて、力みがなくなり、その分が威力やスピードに回ってくれる。
 
その動きを繰り返すと、体にそのための神経回路が出来上がる。
一度、それが出来ると、少々の事では崩れないから、その段階でガードを上げてもそれほど肩が緊張しないし、力みも少なくて済むんですよね。
 
余程の天才とか、センスがいい人以外は、こういう手順で教えてあげた方が後の上達スピードが本当に違う。
僕は同じ打撃系のボクシングもキックボクシングもしてきたし、指導もしていたので、この「完成形を教える弊害」は本当に身を持って感じてきました。
 
 
 
【その競技を「嫌いにならせない」ために】
 
野球やサッカーといったスポーツも同じで、競技スポーツの指導の際、「完成形をいきなり教える」のは、かなりセンスのいい人以外には辞めた方がいいのになあ~といつも思っています。
やる気はあるのに、それで「自分は才能がない」と思って諦めてしまう人が多いと思うんですよ。
多分、教え方さえ変えれば、かなり上達すると思うし、活躍出来る選手も増えると思う。何よりも、その競技が嫌になる人を減らせると思うんですよね。
 
どうせやるなら、その競技を好きになり、現役を辞めてからも、その競技への愛を持っていて欲しいですもんね。そういう人がその競技を支えるファンやサポーターになってくれるし、我が子や知り合いの人にその競技を広めてくれる宣伝マンになってくれますからね。
 
 

投稿者プロフィール

岡本
岡本マーシャルアーツアカデミー代表・空手クラス担当
東京の大手フルコンタクト空手の道場で長年修行。
空手修行の一環としてボクシングやキックボクシングも学び、プロライセンス取得・試合も経験。
道場での指導の傍ら、ボクシングトレーナー、フィジカルトレーナーとしても活動しています。
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